東京高等裁判所 昭和33年(う)798号 判決
被告人 田口雅美
〔抄 録〕
所論は、事後強盗は、窃盗の現場においてなされることを要するものであるのに、本件において被告人は、現場においては、何ら暴行脅迫をしていないのであつて、現場を立ち去り、相当時間経過後のことについては、仮りに、逮捕を免れるため暴行、脅迫行為があつたとしても、事後強盗をもつて律すべきではない旨主張するにより、案ずるに、刑法第二三八条の準強盗罪における暴行、脅迫は、窃盗の機会においてなされることを要するものではあるが、右窃盗の機会とは、所論のように、必ずしも窃盗の現場のみに局限されるものではなくて、窃盗の現場及びこれに引き続いて財物の取還又は犯人の逮捕をなし得べき状況の存する場合をいうものと解すべきところ、原判決の援用する関係証拠に徴するときは、前示両名の本件暴行は、原判決認定のとおり、右両名が原判示被害者方において、原判示準内地米南京袋入二個を窃取し、各一袋ずつをかついで同家戸外に出たところを、たまたま附近密行中の道下巡査に発見され、逮捕されようとしたときに始まり、それより引き続き同巡査に追跡されて逃走し、原判示大宮平造方裏庭まで行つたとき、同所において、更に同巡査に暴行を加えたものであることが認め得られるのであつて、前示のような窃盗の現場及びこれに引き続いて犯人の逮捕をなし得べき状況の存する場合に該当するものというべきであるから、これについて準強盗罪の成立を認めた原審の認定は相当であつて、原判決には、所論の違法は存在しない。
(中西 山田 鈴木良)